[書評] これからの日本、経済より大切なこと
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最終更新日:2014/04/28
Book Review アベノミクス, ダライ・ラマ14世
ダライ・ラマ14世、名前は一度くらい聞いたことがあるだろうか。
チベットの元指導者であり、チベット仏教ゲルク派最高位の僧侶である。
本書は、各テーマごとにそって彼の言葉を著書からピックアップする形で構成されており、そこにジャーナリストの池上彰氏のエッセイが織り込まれている。
そのため、各テーマごとのポイントは非常にコンパクトにまとめられている一方、過去に彼の著書を複数冊読んだことのある読者としては少々物足りない内容となってしまっているところが残念である。
アベノミクス
2012年12月に安部総理大臣が誕生。
いわゆるアベノミクスを推し進めることにより、デフレからの脱却と持続的成長への回帰が目標として掲げられることとなった。
年率2%成長目標という数字が一人歩きしてしまっているようだが、数値目標を掲げた事により、世論の期待値を高めることに成功したことは間違いない。
日本経済もこれでやっと再び息を吹き返して、私たちの生活もこれからどんどん良くなっていくだろう。
いや、ちょっとまてよ。ほんとにそんなにうまいこと行くのだろうか?
経済理論に人間性は考慮されていない
巨額の債務、不安定な金融システム、息詰まりを打破できない行財政改革・・・
戦後70年あまりにわたって解消されずに溜まった膿は、いまの政治経済システムの延長線上で解決できるのだろうか?
あるいは、これが解消されない限りは再び経済繁栄などないかもしれない。。
資本主義経済の考えの中での個人の行動は、経済合理性に基づいた最適行動。
これが経済学の基本。
そしてその上に、家計における消費行動と企業における生産販売活動が論理的に説明されている。
資本主義経済では経済循環をくりかえしながらも長期的に経済成長が可能であると。
しかし、残念ながらそこには人間性や感情というものを考慮する余地はない。
ダライ・ラマ14世からのメッセージ
ダライ・ラマ14世は、この部分を常に強調しながらメッセージを私たちに送ってくれる。
つまり、私たちはもっと人間らしく経済活動に携わる必要があると。
競争することに明け暮れ、お金を稼ぐためだけに働き、そして築いた地位や財産を維持することあるいは更に大きくすることに躍起になる、そんなことはもうそろそろやめにしようと。
慈悲心や利他心がもっと必要だという。
これらは仏教用語であるが誤解を恐れずに言えば、もっと相手を思いやる心を持つ必要があると言うことだ。
そして、物質的な幸福ではなく内面的な幸福、つまりは精神的な幸福を追い求めるべきだと。
本書はダライ・ラマのメッセージをコンパクトにまとめていることでとても読みやすく構成されている。
さらに、彼のメッセージを解説する形でジャーナリストの池上彰氏のエッセイが挟み込まれている。
対談形式ではないが、なかなかユニークな内容にまとまっている一冊だ。
「これからの日本、経済より大切なこと」
池上彰 (著), ダライ・ラマ法王14世 (著)
飛鳥新社
第一章 経済について
第二章 格差について
第三章 お金について
第四章 物質的価値について
第五章 仕事について
第六章 日本について
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